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筋肉の衰えと代謝異常を防ぐ「カプリン酸」の力―飽和脂肪酸による脂肪毒性を改善―

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 2026年9月29日
古庄 謙時郎(修士2年)・井上 菜穂子 准教授 生物機能化学研究室

研究成果のポイント

  • 中鎖脂肪酸のカプリン酸(C10)が、パルミチン酸による骨格筋細胞の脂肪毒性を改善することを明らかにした
  • カプリン酸の同時投与により、筋管細胞の構造、収縮活動、インスリン応答が回復した
  • 脂質オミクス解析により、カプリン酸が細胞内の脂質組成を変化させ、パルミチン酸由来のセラミドなどを減少させることを示した
  • 骨格筋の代謝障害に対する栄養学的なアプローチや予防法への応用が期待される

研究の背景

骨格筋は、全身のエネルギー代謝を担う重要な組織です。肥満や2型糖尿病では、血中の遊離脂肪酸、とくにパルミチン酸などの飽和長鎖脂肪酸が筋肉に過剰に蓄積し、インスリン抵抗性や筋機能の低下を引き起こす「脂肪毒性」の一因となります。

本研究では、ココナッツオイルや乳製品などに含まれる中鎖脂肪酸の一種、カプリン酸(C10)に着目し、骨格筋細胞の脂肪毒性に対する作用を調べました。研究グループは、産業技術総合研究所、東洋大学、近畿大学と共同で研究を行いました。

研究成果

マウス骨格筋由来のC2C12筋管細胞にパルミチン酸を投与すると、脂肪滴の過剰な蓄積、インスリンシグナルの低下、筋収縮活動の低下が見られました。カプリン酸を同時に投与したところ、これらの機能低下が改善し、筋管細胞の構造とインスリン応答も回復しました。

さらに、脂質オミクス解析とプロテオミクス解析から、カプリン酸は細胞内の総脂質量を減らすだけでなく、脂質組成を変化させることが示されました。具体的には、パルミチン酸由来のセラミドや特定のジアシルグリセロールが減少し、解糖系やTCA回路など、エネルギー代謝や筋収縮に関わるタンパク質群の働きが正常化していました。

本研究は、細胞を用いた実験により、カプリン酸が脂肪毒性下で骨格筋の機能を保つ仕組みの一端を示したものです。肥満や2型糖尿病に伴う骨格筋の代謝障害に対する栄養学的なアプローチや予防法への応用が期待されます。

論文情報

項目 内容
論文タイトル Capric Acid Attenuates Palmitate-Induced Lipotoxicity and Metabolic Dysfunction in Skeletal Muscle Cells
著者 Kenjiro Furusho, Wakako Tawara, Shunsuke Amagaya, Ayumu Kojima, Risa Mukai, Atsushi Kuno, Azusa Tomioka, Shinji Okada, Tsukasa Mori, Nobuhiro Zaima, Naoko Goto-Inoue
所属 日本大学、産業技術総合研究所、東洋大学、近畿大学
掲載誌 Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry(オンライン公開)
DOI 10.1093/bbb/zbag136
論文閲覧 Oxford Academic

お問い合わせ

生物機能化学研究室
井上 菜穂子(いのうえ なおこ)准教授
TEL・FAX:0466-84-3681
E-mail:inoue.naoko@nihon-u.ac.jp

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