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スケトウダラ由来タンパク質が骨格筋肥大と脂質代謝を制御することを解明

PLOS ONE 2026年5月11日
井上 菜穂子 准教授・森 司 教授 生物機能化学研究室

研究成果のポイント

  • スケトウダラ由来タンパク質(APP)が骨格筋、特に速筋線維の肥大を促進することを明らかにした
  • APP摂取後90分の血中因子が筋細胞の肥大および収縮機能を向上させることを示し、その因子の一つとしてGLP-1を同定した
  • 脂質オミクス解析により、APP摂取によって肝臓および骨格筋で脂質代謝の大規模なリモデリングが起こることを明らかにした

研究の背景

骨格筋は運動機能だけでなく、糖・脂質代謝の制御や全身のエネルギー恒常性維持に重要な役割を担っています。そのため、筋量の維持・増加はサルコペニアや生活習慣病の予防において重要です。

従来、筋肥大は主にロイシンなどの必須アミノ酸によるmTOR経路の活性化によって説明されてきましたが、近年では食品由来タンパク質の機能性にも注目が集まっています。スケトウダラ(Alaska pollock)は日本で広く消費される魚であり、そのタンパク質(APP)は高い栄養価と利用効率を有することが知られています。これまでにAPPが骨格筋肥大を促進することは報告されていましたが、その分子メカニズムは十分に解明されていませんでした。

研究成果

本研究では、摂食タイミングを厳密に制御した動物モデルを用い、APP摂取後の時間依存的な生体応答を解析しました。その結果、APP摂取は特に速筋線維において顕著な肥大を誘導することが明らかとなりました。

また、摂取後90分の血漿を骨格筋培養細胞に添加すると、筋管の肥大および収縮能が有意に向上することが確認され、血中に筋分化を促進する因子が存在することが示唆されました。その因子の一つとして、インクレチンホルモンであるGLP-1が同定されました。

さらに、骨格筋および肝臓組織を用いたプロテオミクスおよび脂質オミクス解析により、脂肪酸代謝やミトコンドリア機能に関連する経路が変動し、脂質代謝の大規模な再構築(リモデリング)が起こっていることが明らかとなりました。特に、ドコサヘキサエン酸(DHA)を含むリン脂質が速筋線維で約127%増加し、膜脂質の組成変化が筋肥大と密接に関連する可能性が示されました。

一方で、APP中に含まれるDHAは極めて微量であり、この脂質変化は単純な食事由来DHAの供給では説明できません。また、体内のDHA合成経路の上昇も認められなかったことから、APPは単なる栄養源としてだけでなく、体内環境を変化させることで筋肥大を促進する「機能性タンパク質」であることが示唆されました。

論文情報

項目 内容
論文タイトル Alaska Pollock Protein as a functional dietary source for promoting skeletal muscle hypertrophy and lipid metabolic remodeling
著者 Ayumu Kojima, Risa Mukai, Mizuki Morisasa, Wakako Tawara, Shunsuke Amagaya, Kenjiro Furusho, Norika Tsutsumi, Yukina Tadokoro, Haruto Otsuka, Miu Fujii, Taro Kishida, Atsushi Kuno, Azusa Tomioka, Shinji Okada, Tsukasa Mori, Naoko Goto-Inoue
掲載誌 PLOS ONE (In press)
公表日 2026年5月11日

お問い合わせ

生物機能化学研究室
井上 菜穂子(いのうえ なおこ)

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