研究の背景
熱帯海域の海は過酷な日光にさらされ、窒素やリンなどの栄養塩の供給が乏しいことか ら、海の砂漠とも形容されますが、サンゴ礁海域はオアシスのごとく多種多様な生物を育ん でいます。「なぜサンゴ礁では生物がここまで繁栄できるのか」、という疑問はダーウインが 最初に提唱したといわれ、ダーウインのパラドクス(矛盾)とも呼ばれています。
研究成果
ヒメジャコガイの組織を質量分析イメージングで解析した結果、褐虫藻に特有の膜脂質であるDGCC(ジアシルグリセロールカルボキシメチルコリン)が、シャコガイの組織に広く分布していることを発見しました。
シャコガイは共生する褐虫藻からDGCCを受け取り、自らの細胞膜脂質へと変換・利用していることが明らかになりました。DGCCはリンを含まない膜脂質であるため、栄養塩が乏しいサンゴ礁環境においてシャコガイがリンを節約しながら繁栄できるメカニズムの解明につながると期待されます。
本研究内容は、iScience の表紙に採用されました。(https://www.cell.com/issue/S2589-0042(23)X0008-X#closeFullCover)

図1: 本研究に関連して iScience 誌の表紙に採用されたヒメジャコガイ
論文情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 論文タイトル | Smart utilization of betaine lipids in the giant clam Tridacna crocea |
| 著者 | Ryuichi Sakai, Naoko Goto-Inoue, Hiroshi Yamashita, Naoya Aimoto, Yuto Kitai, Tadashi Maruyama |
| 掲載誌 | iScience 26(7), 107250 |
| 発表日 | 2023年6月28日 |
| DOI | 10.1016/j.isci.2023.107250 |
お問い合わせ
生物機能化学研究室 井上 菜穂子(いのうえ なおこ)