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海洋食物網におけるフグ毒を保有するオオツノヒラムシの栄養的役割

Marine Biotechnology 2026年1月5日
白井 響子 M2・糸井 史朗 教授 増殖環境学研究室

研究成果のポイント

  • 安定同位体比分析により、野生のオオツノヒラムシがイシダタミなどの巻貝やヒザラガイ 類を主な餌としていることを特定しました。
  • 無毒な餌のみを長期間与えて飼育したヒラムシの個体からも高濃度の毒が検出され、餌の 毒性の有無に関わらず体内に毒を蓄積できることが判明しました。
  • 毒の起源は単純な生物濃縮ではなく、共生細菌が関与する内部プロセスや、餌の成分を原 料とした体内での合成・変換の可能性が示唆されました。

研究の背景

フグ毒として知られるテトロドトキシン(TTX)は、細菌を起点とした食物連鎖によりフ グ類等に蓄積されると考えられてきましたが、細菌による生産量はきわめて微量であり、生 物濃縮の全容は未解明なままです。近年の研究では、高濃度のTTX をもつオオツノヒラム シPlanocera multitentaculata がクサフグ等の上位捕食者の毒化に寄与する可能性が示唆され ましたが、野生下での食性や食物網における役割は不明でした。

研究成果

本研究では、安定同位体比分析を用いて野生のオオツノヒラムシの食性を解析しました。その結果、野生個体はイシダタミなどの巻貝やヒザラガイ類を主な餌としていることが明らかとなりました(図1)。

TTX の体内蓄積メカニズムを解明するため、無毒な餌のみを長期にわたって与えた飼育実験を行ったところ、飼育個体からも高濃度のTTX が検出されました。この結果は、餌の毒性の有無に関わらずヒラムシが体内に毒を蓄積できることを示しており、TTX の起源が単純な生物濃縮ではないことが強く示唆されます。共生細菌が関与する内部プロセス、あるいは餌の成分を原料とした体内での合成・変換といったメカニズムの存在が考えられます。

さらに、オオツノヒラムシが海洋食物網においてクサフグ等への重要なTTX 中間供給源として機能していることが示されました。捕食頻度は高くないものの、体内に高濃度の毒を保有する本種がフグの毒化に大きく寄与していることが明らかとなりました。

オオツノヒラムシの海洋食物網における栄養的役割を示す模式図

図1: 巻貝やヒザラガイ類を餌とするオオツノヒラムシが、クサフグへの TTX 供給源となることを示す模式図

論文情報

項目 内容
論文タイトル Trophic Role of the Tetrodotoxin-Bearing Flatworm Plancera multitentaculata in the Marine Food Web
著者 Kyoko Shirai, Masaaki Ito, Takuto Yamamoto, Megumi Morimura, Inori Watanabe, Maho Kashitani, Shusuke Takizawa, Yui Kaneko, Kotone Nagahama, Anzu Hayashi, Taiki Okabe, Hikaru Oyama, Rei Suo, Naoko Goto-Inoue, Tsukasa Mori, Shouzo Ogiso, Nobuo Suzuki, Hajime Matsubara, Tomohiro Kuwae, Shingo Ueda, Noriyuki Takai, Shiro Itoi
掲載誌 Marine Biotechnology 28(1), 9
発表日 2026年1月4日(オンライン版)
DOI 10.1007/s10126-025-10560-8

お問い合わせ

増殖環境学研究室 糸井 史朗(いとい しろう)

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