研究の背景
フグ毒として知られるテトロドトキシン(TTX)は、青酸カリの800倍を超える極めて強力な神経毒です。TTX を保有する海洋生物はフグ科魚類だけではなく、ツムギハゼ、ウモレオウギガニ、ヒョウモンダコ、ヒトデ類など多種にわたります。近年、オオツノヒラムシがフグ類の毒化に関与する有力な餌生物として注目されていましたが、日本各地の個体で毒組成がどの程度共通しているのかは明らかではありませんでした。
研究成果
本研究では、本州の5つの地点(宮城県・石川県・茨城県・千葉県・静岡県)で採取したオオツノヒラムシ Planocera multitentaculata を分析しました。その結果、すべての個体からテトロドトキシン(TTX)と主要な関連成分(5,6,11-trideoxyTTX、monodeoxyTTXs、dideoxyTTXs、11-norTTX-6(S)-ol)を検出しました。
採取地域に関わらず、TTXと主要な関連成分は共通した毒組成比を示しました。地域差よりも、TTXと5,6,11-trideoxyTTXを中心とする一定の毒組成比が優勢であることが確認され、体内で毒組成を維持する仕組みの存在が示唆されます(図1)。
本成果は、オオツノヒラムシが日本列島全域においてフグ類の毒化に関与している可能性を強く示すものであり、沿岸域における食の安全管理や毒素の循環機構を理解する上で重要な知見です。

図1: 各地点で得られたオオツノヒラムシにおける TTX およびその関連成分の組成比
論文情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 論文タイトル | Distribution of tetrodotoxin and its analogs in the toxic flatworm Planocera multitentaculata from Honshu Island, Japan |
| 著者 | Rei Suo, Makoto Tanaka, Masaki Asano, Ryota Nakahigashi, Masaatsu Adachi, Toshio Nishikawa, Shouzo Ogiso, Hajime Matsubara, Nobuo Suzuki, Shiro Itoi |
| 掲載誌 | Fisheries Science 90(2), 319-326 |
| 発表日 | 2024年1月20日 |
| DOI | 10.1007/s12562-024-01754-5 |
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増殖環境学研究室 周防 玲(すおう れい)