精子競争と受精の生理学
体外受精を行う魚類を対象に、精子の運動性能や、雌による「配偶後選択」の仕組みを明らかにする研究です。サケ科魚類では、体高が高い雄や婚姻色などの二次性徴が発達した雄ほど精子の遊泳速度が遅い傾向が見られ、形態的な優位性と精子の質との間にトレードオフが存在する可能性が示されています。また、卵とともに放出される雌の体腔液や、雄の精漿が精子運動に与える影響にも注目し、受精の場でどのような生理的相互作用が起きているのかを検証しています。こうした研究を通じて、魚類の受精戦略と繁殖成功の仕組みを多面的に解明することを目指しています。

環境適応と代謝・成長
人工ふ化放流の課題解決や、環境変動に対する水生生物の適応能力を、生理学・生態学の両面から明らかにする研究です。サクラマスでは、野生魚由来の遺伝子を持つ半野生魚が継代養殖魚よりも高い標準代謝率や遊泳能力を示すことが分かっており、こうした生理的特性が自然環境での生存や競争力に関わる可能性が示されています。また、資源が減少しているシシャモを対象に、水温や餌環境が代謝や成長に与える影響も調べています。こうした研究を通じて、放流技術の改善や水生生物の保全に役立つ知見の創出を目指しています。


繁殖生態と配偶者選択戦略
水生生物が次世代を残すためには、どの相手を選び、どのように繁殖するかが重要です。本研究では、魚類の配偶者選択や雄間競争、代替繁殖戦略に注目し、繁殖成功を左右する仕組みを明らかにしています。ヒメマスでは、雌が嗅覚を用いて遺伝的に適度に異なる雄を選ぶことが示されており、サクラマスでも雌が河川残留型雄の匂いを選好することが分かっています。また、シロザケやカラフトマスでは、体サイズや鼻曲がりなどの二次性徴が雄間競争に影響し、小型雄は求愛やスニーキングによって繁殖機会を確保します。さらに、複数の雄が繁殖に関わることで、雌や子の適応度が高まる可能性についても研究しています。
